初めてのタイ〜バンコク・チェンマイ〜

とても長い文章ですが、当店のなりたちについて、お付き合いくださいましたら幸いです。

「タイ」という国をご存知でしょうか?行ったことはありますか?

私は2013年の11月に初めてタイのバンコク、チェンマイを訪れる前までは、タイという国の事はほぼ知りませんでした。

レディボーイが多い、日本の企業が多くある、仏教国、大好きなタイ料理の国、トムヤムクン、グリーンカレー!

そんな程度の知識ではありましたが、タイを毎年のようになんども訪れているお友達に誘われて、「それだけ行っている人と一緒に行くなら間違いない♪」と思い、旅行に行く事にしたのでした。

10名程の大所帯、めいめいのスケジュールで飛行機と宿のチケットをとって、一緒に行動できるところはする、そんな感じの旅行でした。

海外旅行によく行かれる方もたくさんいらっしゃったので、あまり海外旅行をしてこなかった私には心強いメンバーでもありました。

まずはバンコク。

強烈な都会、渋滞、人の多さ、人種のバラエティ豊かさ、臭い、道路沿いの屋台の列、あふれる物や食べ物、大都市の中のあちこちにある祠、黄金のお寺。。。まるで映画の「未来都市」の姿のようなカオス感に圧倒されました。

地上80階、きらびやかなバーのある高層ビルの下には、線路沿いに建てられたスラム街もあったり、高級レストランに目の前に低価格の麺を出す屋台が並んでいたり。。。

以前訪れたヨーロッパの都市や日本の東京とは全く異なった「アジアの大都市」の姿に、知らない世界にやってきたんだなという心のざわめき、そして楽しさがありました。

そしてバンコクから北へ720kmのチェンマイへ。

バンコクはもちろんその名前は知っていましたが、チェンマイは初めて知った場所でした。

タイ第二の都市チェンマイは「ランナー王朝」の王が作った街で、街中にはその時代の遺跡でもある古い城壁があります。古都の雰囲気があって、バンコクとは全く違った印象の街。「北方のバラ」と呼ばれたりもします。

チェンマイは欧米の観光客が多く、洋風のお店や「カフェ」があちこちにあります。アジアと欧米がうまく共存あるいはミックスされた独特の文化を持つ場所だという印象で、その独特な感じにチェンマイという街に思った以上に好印象を持ちました。

街中のあちこちに市場があり、そこにはいつも野菜もハーブもたくさんあって、歩けば素敵なカフェもあちこちにあるし、きらびやかなお寺も楽しく、安くて美味しいタイ料理の屋台もいくらでもある。
こんな街に住めたらいいなぁ、そんな思いにもなりました。

夜空を埋め尽くす灯火

この旅のメインイベントは、チェンマイのイーペン地区で毎年開催される地元向けの「イーペン・サンサーイ」という仏教の式典に参加する事でした。

この式典は、新暦10月〜11月頃の満月の日前後に行われるタイ各地で行われる「ロイクラトン」という仏教のお祭りに合わせて開催されます。この「ロイクラトン」では、花やろうそく、線香、植物や食物で作られた美しい灯籠(クラトン)を川に流して、川の恵みへの感謝の気持ちを表し、身の穢れを灌ぎます。

このロイクラトンと同時期に行われるイーペン・サンサーイでは、読経の儀式の後に「コムローイ」と呼ばれる熱気球を参加者が空に一斉に放つイベントがあります。

ロイクラトンの時期は、指定された時間帯であればコムローイを自由に買ってどこででも各自あげることができるので、街の夜空にコムローイがゆらゆらあがっていくのを目にしますが、何千のコムローイが同時にあがっていく姿を見られるのは、この「イーペン・サンサーイ」と、外国人観光客向けの「イーペン・ランナー・インターナショナル」のみです。
このお祭りに参加するのは非常に大変でした。

日本ではとても考えられない交通状況を乗り越えて、さらに朝の満員電車状態で先に進んでいるのかいないのか分からない道を行き、一斉打ち上げにギリギリのところでなんとか間に合いました。

暑さと苦しさと焦りをこえて待っていた光景は、その大変さを打ち消すものでした。

あまりの美しさに、知らない間に涙が流れていました。

隣では欧米人の若い男の子も泣いていました。

この何千の灯の一つ一つに、こうした涙だったり想いが乗せられているんだな。。。と思うと、感動もひとしおでした。
またこのコムローイをあげに必ずタイ、チェンマイへ行こう、そう心に決めたのでした。

そしてこの素敵な場所と経験を、まだそれを知らない友達と楽しめたらいいなぁ、と。

みつけた夢

さて、チェンマイ市内にはカフェがたくさんあると書きましたが、それは欧米人の滞在者が多いからという理由だけではなかったようです。

この旅行の同行者の方から「チェンマイにタイ産のコーヒー豆がある」という事を聞き、滞在中に調べてみました。

北タイはコーヒー豆の産地でもあるという事、山岳民族がその担い手である事、そしてまだ日本ではほとんど見かける事のない豆である事が分かりました。

チェンマイ市内にあるタイ産のコーヒー豆で出すカフェで飲んで、その本格的な味わいに感心したのでした。

帰国してからもどうしてもタイのコーヒーの事が忘れられず、色々と調べていくうちに、チェンマイから更に北部にある「チェンライ」という街に、タイのコーヒー豆の栽培と販売を手がけている日本人の方がいらっしゃることを知りました。

当時私は数年間会社員としてネットショップの運営の仕事をしており、いつか独立をしたいと考えていた所でした。

30代後半で手術からの不妊治療も甲斐なく子どもを持てぬまま離婚し、迎えていく40代。。。

一人で生きていく事も視野に入れてこれからの自分の人生を立てていかなくてはならない。。。

人生の折り返し地点に立った時にその生きる術をどうするのかを強く考えていました。

そんな時に行ったタイ旅行で強く印象に残ったチェンマイの街、まだ日本では知られていないタイのコーヒーとその歴史的背景、そしてそのコーヒーに携わっているチェンライの日本人の方の存在。。。

たまたま何気なく行ったタイ旅行で私を惹きつけてやまなくした北タイとそこにあるコーヒーが、天啓のように感じたのでした。

これまで培ってきたネットショップの経験をフルに活かして、北タイの魅力をタイのコーヒーをキーアイテムとしてお伝えしていく、それを仕事にしていく事を決意しました。

そこから私は、新規事業スタートのために資金調達を始めました。

自治体が行っている女性の独立を応援する「寡婦向け」の金利の発生しない融資のシステムがあることを知り、相談に行きました。

しかし「ネットショップは実態がないので貸付対象にはならない」との返答が。

この時代、ネットショップは低資金で始められるまさに女性の独立にはうってつけの業態であるというのに、実店舗という大きな資金が用意できなければ始められない業態でなければならないとは。。。それではあまり意味がないのではないかとその時代遅れな制度に落胆したのでした。

しかし、試行錯誤と友人の力を借りて事業計画書を初めて作成し、なんとか銀行での融資に漕ぎ着けることができました。

北タイと日本をつなぐ

そんな中、チェンライでコーヒー栽培に携わっている日本人「今中健太郎さん」にお会いし、コーヒー農園を見せていただくためにチェンライへ初めて行きました。

前々からチェンライへよく滞在するお友達から、チェンライはチェンマイをもっとこじんまりとさせて田舎もすぐある感じ。。。水牛が田んぼにいたりするよという街の様子の話しをよく伺っていて、どんな所だろうと楽しみにしていました。

実際行ってみた所、本当にそんな所でした(笑)。が、風光明媚で、60代以上の方にとっては子ども時代の日本の田舎を思い出させるような感じなのだろうと思うような、そんな懐かしい風景のある街でした。

市内には大きなショッピングモールもあり、おしゃれなカフェもたくさんあり、少し走ればすぐにそこら中にバナナやパパイヤが成っている木があり、あちこちに花も咲いている、温泉もある、ミャンマーやラオスへの国境も近い。。。

チェンマイも素敵な街ですが、チェンライの良さにますます、この北タイという地方の素晴らしさをより多くの方々に知っていただきたい、やはりそれにはこの地のあちこちで歴史的背景を持って栽培されている「コーヒー」を伝道師にしたい、そんな想いを再確認したのでした。

また今中さんのこれまでの歩みと想いも伺い、北タイのコーヒーをもっと知っていただきたいという想いの一致も大きなモチベーションとなりました。

それから二回チェンライを訪れ、雑貨類の買い付けも行い、約一年の準備期間を経て、ショップオープンを迎えました。

ここまで来るのに、多くのお友達の暖かい協力をいただきました。

決して一人では成し得なかった道のりです、心より感謝いたします。

本文をその皆さまへの謝辞とさせていただきます。

Flying Lightsでは、北タイの魅力を、その地で生まれるコーヒーや山岳民族の方々が作る雑貨等を日本のみなさまにお届けすることによってお伝えし楽しんでいただき、またその活動が現地のコーヒー栽培に関わる人、事にメリットをもたらしていくことを目指しています。

また女性がネットショップを開業し生計を立てていくことの見本となり、多くの女性の後押しになればと思っております。

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